基礎外断熱はシロアリに弱いのですか?

shiroari0001.JPG
【質問】
長野県内で外断熱住宅を検討している者です。いろいろと情報を調べているうちに、寒冷地では外断熱住宅が適していると考えるようになりました。
また、外断熱住宅と言っても、「基礎の内側に断熱するタイプ」「基礎の外側に断熱するタイプ」「床断熱のタイプ」など、いろいろな種類がある事もわかりました。
しかし、外断熱住宅の良さを理解するにしたがって、やはり【基礎の外側】に断熱するのが一番良いと思いました。
地元の工務店に相談したところ、「基礎の外側を断熱するとシロアリにやられます」と言われました。本当に基礎断熱にするとシロアリの被害を受けるのでしょうか? 何か対策はありますか?


(回答)
・だいたい、8~10年前までの常識では、その工務店さんの言う通りです。
いまから8~10年前での「外断熱住宅」では、基礎の外側にポリスチレンフォームという板状の断熱材を付けていました。
その断熱材がシロアリに進入路になります。下記の写真をご覧ください(↓)

shiroari00015.jpg

*写真をクリックすると拡大表示されます。

・暖かい家にするために外断熱住宅にするのですが、基礎の外側に断熱材をつける場合、断熱材がシロアリの進入路になる可能性がある事を建築業界関係者が知るようになりました。
そこで、「基礎外断熱の方が効果は高い事はわかるが、シロアリが怖いので、基礎の内側に断熱材を貼るか、もしくは床断熱にする方が良い」と工務店・設計事務所・ハウスメーカーも考えていたのです。これが、住宅業界の常識となっていきました。
ですから、地元の工務店さんが言っている事は正しいのです。
*さらに、大変残念な事ですが、基礎断熱がシロアリの被害にあった事実を住宅業界関係者(建築会社や断熱材メーカーなど)はできるだけ隠してきました。断熱材がシロアリの被害にあう事が広く知れ渡ると、基礎外断熱が嫌われるからです。

「暖かい家にするには【基礎の外側を断熱するのが良い】」「しかし、基礎の断熱材からシロアリが侵入するのが怖い」、この理由により、外断熱住宅といっても、基礎の内側を断熱するのが主流になりつつありました。単に「暖かい家」を実現するのではなく、その後の長期にわたって「シロアリから家を守る」という使命をもった工務店さん達は、自然と「外断熱住宅であっても、基礎は内側を断熱する」という結論に至った事はぜひご理解いただきたいと思います。

・実際、以前、エコホームズが建てた外断熱住宅(基礎外断熱)では、下記のような被害が発生しています。

(基礎の断熱材から侵入したシロアリは、外壁側に貼ってある断熱材の中を侵入して、上部へ上がっていきます。そして、1階の天井裏にある梁を食べます)
*画像をクリックすると拡大表示されます。

shiroari00010.jpg


shiroari0009.jpg

一般的に、シロアリの被害にあっているかどうかを点検するのは「床下点検」です。しかし、外断熱住宅(基礎外断熱)の場合、床下を点検してもシロアリの被害にあっているかどうかをチェックするのが極めて難しいのです(断熱材の中を移動するため、内装材をはがさない限り、シロアリの蟻道を発見するのが極めて難しいためです)。

なお、高気密住宅にするための素材であるサーモプライも下記のようにシロアリが食べます。

shiroari00014.jpg

*サーモプライの役割については下記をクリックしてご覧ください(↓)
【高気密住宅にするための秘訣】

余談ですが、このサーモプライは高気密住宅にするだけではなく、住宅の構造を強くする機能を持っているため、外断熱住宅に限らず、他の住宅にもどんどん使用されるようになりました。しかし、残念ながら、サーモプライその物には防蟻処理剤を塗布することが難しいのです。


・このような事実を知るにつれ、「外断熱住宅は建てるのが面倒だし、シロアリ対策も確立されていないのでやめておこう」と住宅業界が考えはじめたのも自然な成り行きでした。


またまた余談ですが、基礎外断熱を施工している会社の中には、後から基礎コンクリートの表面に断熱材を貼っている会社があります。
私達も既存住宅をエコリフォームする場合、既存の基礎の表面に断熱材を貼る作業をおこないます。(エコリフォームにおける基礎外断熱については下記をクリックしてご覧ください)
エコリフォームにおける基礎の「耐震補強」について

基礎コンクリート表面に後から断熱材を貼る場合、断熱材とコンクリートの間をシロアリが入り込む可能性があります。下記の写真をご覧ください。

shiroari0003.jpg

基礎の表面にある「茶色のライン」が蟻道の痕跡です。この被害は、断熱材を後から貼ったのではなく、コンクリートを打ち込む時に断熱材をセットしている場合ですので後から貼るよりもコンクリートと断熱材の間の隙間が少ないはずなのですが、それでもシロアリが侵入しています。
つまり、基礎コンクリートに後から断熱材を貼るのは、断熱材の中だけではなく、その隙間もシロアリが侵入する可能性があります。


・しかし、エコホームズが建てている【地熱住宅】では、【基礎外断熱】は絶対に必要なのです。また、温熱環境を考えると、基礎だけではなく、住宅全体も外断熱工法で建てる必要がありました。
「地熱住宅を建てるのをやめるか」もしくは「外断熱住宅のシロアリ対策を究めるか」のどちらかを選択する必要に迫られました。
そして、「外断熱住宅のシロアリ対策を究める」方向へ進みました。

・私達がはじめて外断熱住宅を建てた1990年ごろとは違い、様々なシロアリ対策部材が開発されていました。そこで、下記の方法へ変更しました。(シロアリ被害に初めて遭遇した1992年ごろから様々な方法を試しました。断熱材の間にステンレス板を挿入したり、断熱材の下をプラスチック部材で覆うなどの方法です。最終的には下記の方法になりました)

1)基礎用断熱材をシロアリ対策品に変更する事。
2)さらに、基礎断熱材の上部を、シロアリが食い破れないテープで覆う事。
3)さらに、テープの上をシロアリが食い破れないシートで覆う事。

下記の写真をご覧ください。

siroari00011.JPG

shiroari00012.JPG


物理的に基礎断熱材にシロアリが入らないようにするためです。もしも、防蟻対策された断熱材の中(もしくは、断熱材とコンクリートの間)にシロアリが侵入しても、その最上部でシロアリがストップされるように対策したのです。
*さらに詳しい内容については下記をクリックしてご覧ください(↓)

【基礎外断熱の防蟻処理】

また、もしも、もしもの場合(上記の対策でもシロアリが床下に侵入した場合)に備えて、土台及び柱部分に「液状の炭」を塗る事もおこないました。
*以前は、ヒバ油(青森ヒバからの抽出液)を散布していたのですが、これはほとんど効果が無い事が判明したので(つまり、ヒバ油を散布してもシロアリ被害にあったのです)、途中から液状の炭に変更しました。

しかし、後で判明したのですが、建物内部の木材に液状の炭を塗ったとしても、断熱材の中をシロアリが移動していく場合、梁(この部分には液状の炭を塗りませんでした)やサーモプライは被害にあう事がわかりました。


私達は「これでシロアリ被害は完璧に防げるはずだ!」と確信していました。施工現場を見学に来た工務店さんからは「ここまでやらなくても大丈夫ではないですか?」と評価されていましたので、絶対の自信がありました。

上記の工法にたどり着いたのが、2001年ごろです。それ以降の地熱住宅では、全て上記の方法で物理的にシロアリが侵入できない方法に変更しました。

しかし、私達は生物の本当の力をわかっていなかったのです。また、素材の経年変化という点もよく理解していませんでした(素材メーカーさんもほとんど説明してくれない問題点がありました)。

上記の対策は、「新築時」においては完璧だと思います。しかし、素材は劣化します。シロアリは私達の想定を超えた行動を起こします。

【私達が想定していなかった事】


1)防蟻対策された断熱材の内部から薬剤が土壌中に流出してしまう事(溶脱)

 ⇒結果として、断熱材内にシロアリが侵入しました。

2)シロアリが食い破れないテープの接着性が悪く、何年かすると断熱材とテープの間に隙間が発生してしまう事。
 ⇒結果として、シロアリがテープと断熱材の隙間から上部のシートへたどり着きました。

3)シロアリが食い破れないシートの「重ね部分」からシロアリが通りぬけた事。(基礎の角部分においては、どうしても、シートが連続できない部分が発生します。
 ⇒結果として、シロアリが壁側の断熱材に到達できました。その断熱材を侵入して、筋交・間柱を喰害して、梁まで被害に遭いました。


結果として、上記の対策をおこなった地熱住宅で、下記のシロアリ被害が発生してしまいました。

1)ホウ酸により防蟻処理された断熱材の内部にシロアリが侵入しました。

・基礎断熱材の外側にある「茶色のライン」はシロアリが防蟻対策された断熱材を齧った跡です。
shiroari0002.jpg

・防蟻対策された断熱材が喰害された様子
shiroari0004.jpg


2)基礎断熱材の内部をシロアリが通り、さらに上部の断熱材(壁部分の断熱材です)に到達しました。

・シロアリ対策用のシートの上部でも、このようにシロアリの被害にあいます。
shiroari00017.JPG

・壁部分の断熱材内部にシロアリが蟻道をつくった様子。
shiroari0006.JPG


3)壁の断熱材の内部を通って梁までシロアリが到達しました。

・梁を喰害した様子
shiroari0008.JPG


私達の対策は、残念ながら、まだまだ完璧ではありませんでした。
そこで、下記の対策を追加しました。


4)基礎断熱材の表面を地中部分もモルタルで覆う事。
*詳しい内容は下記をクリックしてご覧ください(↓)

基礎断熱材の外側にモルタルを塗る理由とは?

shiroari00016.jpg


5)基礎外断熱材を地中から守るため「基礎外断熱専用シロアリ防除処理工法=タームガード」を設置する事。
タームガード


またまた余談ですが、全国で施工が可能であるタームガードを、できるだけ安価に施工してもらうため、工務店さん達(特に、ecoハウス研究会が中心メンバーです)と一緒に「共同購入」をおこなっています。(つまり、たくさんの仲間が一緒になってメーカーに交渉して、タームガードの施工単価を安くしてもらっています)


現在、私達が研究してきた「基礎外断熱住宅のシロアリ対策」についてまとめてみましょう。

1)基礎用断熱材をシロアリ対策品に変更する事。
2)さらに、基礎断熱材の上部を、シロアリが食い破れないテープで覆う事。
3)さらに、テープの上をシロアリが食い破れないシートで覆う事。
4)基礎断熱材の表面を地中部分もモルタルで覆う事。
5)基礎外断熱材を地中から守るため「基礎外断熱専用シロアリ防除処理工法=タームガード」を設置する事。


「あれっ? すでにシロアリ被害にあってしまった1)~3)の項目はやめても良いのでは?」と疑問に思われるのではないかと思います。
確かに、全く効果がなかった3)についてはやめても良いと考えています。
しかし、1)と2)については、効果が認められるので今後も使用し続けます。念のためです。


以上です。
御不明な点がありましたら、いつでも下記のフォームからご連絡ください。

また、同業者(工務店さん)のみなさんで、私達と一緒に「基礎外断熱」に取り組んでいきたい方も下記のフォームからご連絡ください。

大変長い内容を最後までお読みいただきましてありがとうございます。