「伝統民家の智恵」ってなんですか?

【質問】
ホームページや小冊子の中に「伝統民家の智恵を活かす」と書かれてあります。また、別に「北欧住宅の特徴を取り入れる」とも書かれてあります。少し混乱しています。さらに具体的に説明してください。

(回答)
・「伝統民家の智恵」と「北欧住宅の特徴」という言葉がいろいろなところにたびたび登場します。つまり、それぞれのメリット・デメリットを理解して、両方のメリットを上手に利用しましょうという発想を基本として【外断熱の地熱住宅】を開発してきました。
それでは、具体的にご説明しましょう。

日本の伝統民家」及び「北欧住宅」のメリット・デメリットを列記します。

1)伝統民家の智恵とは?
(メリット)
・自然(四季の気候)と一体となる開放的な住居。通風重視。
⇒春・秋などの気持ちが良い時期に、自然の心地よさを家の中に取り込むこと。蒸し暑い夏でも快適に過ごすための智恵。

・木材(柱・土台・梁などの構造材)が呼吸(湿気の吸放出)できるように建てられている。
⇒木材が長期間に渡り腐らず強度を保てること。

・床下に大量の空気の流れをつくる。また、床下から上部に向けても空気の流れを確保する。

・大きな屋根
⇒屋根の断熱性能が高いこと。

・土間
⇒地中熱の利用。特に夏は土間部分がひんやりとしている。

(デメリット)
・梅雨〜夏にかけて快適に過ごすため、冬は「寒い」。
夏の高温多湿な気候に対応する住宅であったため(それが家を長持ちさせる秘訣でもあります)、冬の対応を切り捨てること。

・特に冬は家の中に急激な温度差が発生すること。
⇒家の中全体は「寒い」ので、人がいる場所だけを暖める(採暖)ため。

【参考情報】
小冊子プレゼント(家庭内事故死撲滅)【ヒートショックを起こさない「温度バリアフリー住宅」とは?】

2)北欧住宅の特徴とは?
(メリット)

・住宅の内と外を明確に区切って熱を逃がさない。
⇒高断熱・高気密住宅

・冬の日射取得が期待できないので窓の面積を小さくして外に熱が逃げないようにする。

・冬、家の中 全体が暖かい。(暖房)

(デメリット)
・高温多湿な地域に適応していない。
⇒つまり、北欧住宅の工法(構造)をそのまま高温多湿な地域には適応させるわけにはいかないこと。

・冬の日射取得を考えていない工法なので、自然エネルギー(日射熱)を利用できない。


日本の伝統民家」及び「北欧住宅」の違いが発生した理由は、それぞれの地域の気候が大きく違うからです。
下記の図をご覧ください。(画像をクリックすると拡大表示されます)

*日本とヨーロッパの湿度

日本では「梅雨から夏にかけて、外気の相対湿度が高い」のに対して、ストックホルムやパリなどでは「夏の相対湿度が低い」のです。
したがって、北欧住宅では「高温多湿地域でも長持ちする家造り」を考えていませんから、北欧住宅の家造り(工法・構造)をそのまま日本に持ち込むのではなく、北欧住宅の良い点だけを「日本の伝統民家」に取り入れると、結果として、「日本の伝統民家」のデメリットも解決できるのです。

両方のメリットを取り入れると、下記の特徴を持つ住宅が実現します。


★「日本の伝統民家」及び「北欧住宅」のメリットを取り入れた住宅の特徴★

①屋根の断熱性能が高い。
⇒夏の暑さを家の中に取り込まないこと。

②季節によって、時間帯によって、外から家の中への「風の流れ」を変えること。
⇒春・秋は解放的な住宅にして、気持ちの良い外気を十分に取り入れる。また、夏(早朝や夜間)のヒンヤリした外気を家の中に取り入れること。

③窓・屋根・壁・基礎の断熱性能を高くして、冬 家の中から外に熱が逃げないようにする。また、夏 家の外から暑さが伝わらないようにする。
⇒高断熱・高気密住宅

④冬、自然エネルギー(日射熱)を家の中に取り込む。

⑤木材(構造材)の周りに空気の流れを作ること。

⑥床下から小屋裏にかけて空気の流れを作ること。

⑦土間からの地中熱利用。
⇒夏はヒンヤリ。冬は穏やかな放熱。


これらの特徴を持った理想的な住宅が完成するのです。