地中熱利用の方法はたくさんあるのですか?

【質問】
「井戸水が夏冷たく 冬暖かい」と書かれてあるのを読んで、なんとなく「地中熱」については理解できました。ところで、「地中熱」を利用する方法はたくさんあるのですか?
他のホームページでは地中に管を通す方法も書かれてありました。


(回答)
・地中熱は世界中どこの地域でも存在しますので、この無尽蔵に蓄えられているエネルギーを利用する試みは世界中で行われています。
・そして、地中熱利用の方法としては、大きく分類すると2種類あります。
・また、原油価格が高騰してきていますから、今後も地中熱の効果的な利用方法がいろいろと開発されると考えています(期待しています!)
・それでは、その2種類の方法を解説しましょう。

【地中熱の利用方法について】

・一つ目は「直接、地中から熱を取り出す方法」です。「クールチューブ方式」と「ヒートポンプ方式」があります。

「クールチューブ方式」とは、建物の外から地中にかけて「管」を埋める方式です。そして、地中から建物内(床下など)にも管を通します。
例えば、夏、外気(30℃)を管を通して地中深く(5〜10メートル程度)まで導入します。すると、地中温度が15℃程度ですから、外気が冷やされます。その冷やされた空気を家の中に持ち込みます。
ただし、高温多湿な空気を地中で冷やすため「結露水」が発生してしまいます。それを水中ポンプなどでくみ出しますが、どうしても管内にカビが発生してしまいます。

その欠点を補う方式が「ヒートポンプ方式」です。管の中には外気ではなく液体の冷媒を通します。さらにヒートポンプによって冷媒から熱を取り出します。主に、海外で普及しています。

【参考図書】
ヒートポンプを探せ!

・二つ目は、私達が利用している「伝導型地中熱利用方法」です。
この原理も非常にシンプルです。下記をご覧ください。

【伝導型地中熱利用の原理】
1)春から夏にかけて、地表面が暖められ、その熱は地中を伝わります。そして、建物の下(地中)にもが伝わっていきます。

2)その熱を冬になっても「冷やさない」ようにします。冷やさないようにするには「床下システム」(これが地中熱を冬に持ち越すシステムです)という装置を設置します。

3)概念としては下記をご覧ください。
(実際に地中温度を測定した結果を図にしました。千葉県成田市での測定結果です。赤い色の部分は温度が高い状態です。画像をクリックすると拡大表示されます。)

①5月20日での測定結果

春の時期は、リセットの時期です。「外気温度」と「地熱住宅/建物下の地中温度」の差が小さい時期です。


②7月20日での測定結果

5月20日の図と比較してください。5月20日に比べて日射量が増え、さらに外気温度が上昇しているため、その熱によって地表面が暖められているのがわかります。


③9月20日での測定結果

7月20日に比べると、地表面の熱が地中に伝わっている様子がわかります。土は熱を伝える性質がありますので、地表面の熱は地中へじょじょに伝わり蓄えられていきます。

この「地表面から伝わり、蓄えられる熱」が「地中熱」です。

この熱(建物の下/地中に伝わった熱)を冬になっても冷やさないようにするのが「床下システム」です。

そのため「床下システム」は、秋から冬になる前から冬の準備(つまり、建物下/地中の熱を冷やさない準備)に入ります。9月10日から冬の準備(冬モード)で動き始めます。

それでは「床下システム(地中熱利用システム)」について詳しくご説明しましょう。


★「床下システム」(地熱利用システム)とは?★

【外断熱の地熱住宅】では、地熱利用のシステム(名称:床下システム)と24時間換気システムを一つのコントローラーで制御しています。

この仕組みをご説明します。

1)床下にある配管は、地熱利用をおこなうための「床下システム」の一部です。(洗面脱衣室に設置してある「点検口」を開けると床下を見ることができます。)

そこには、給水・給湯の配管(下記の写真では、給水=青色 給湯=赤色)と排水管の横に太目の管があります。
それが「地熱利用システムの配管の一部」です。(画像をクリックすると拡大表示されます)

地熱利用 床下システム

下記の写真は施工中の現場で撮影したものです。床材を貼る前でないと見る事ができません。
(画像をクリックすると拡大表示されます)
CIMG3947.JPG

*管にオレンジ色のキャップがついていますが、これは工事中に配管内にホコリがはいらないための工夫です。床下を清掃する際、このキャップを外します。


2)家の中で目立たない場所にコントローラーを設置します。これは「地熱利用システム」と「24時間計画換気システム」を自動でコントロールするためのものです。

コントローラー 地熱利用システム


3)2階へあがってください。さらに小屋裏へ行くための階段をあがってください。そこには、システムが設置してあります。

床下システムと換気システム


4)奥を見ると、眼の前に設置してあるのが「地熱利用システム」の一部です。

地熱利用システム

下記の図の通り、2階天井付近にたまっている暖気を床下へ送り込むためのシステムです(夏は逆の流れをつくります ↓↓↓)(図をクリックすると拡大表示されます)

床下システム 概念図

2階天井付近に溜まっている暖気を床下に送り込むと、床下/基礎コンクリートに少しずつ蓄熱していきます。このわずかな熱によって、建物下(地中)が冷え込むのをおさえます。つまり、春から夏にかけて、地中を伝わって蓄えられた熱を冬に持ち越すための工夫です。暖気によって基礎コンクリートに蓄えられる熱は少ないので「基礎の外断熱」は絶対に必要になります。


5)「計画換気システム」も近くに設置してあります。

24時間計画換気システム

このように、地熱住宅では、小屋裏の一部空間を利用して、「地熱利用システム(床下システム)」と「24時間換気システム」を設置しています。


6)【外断熱の地熱住宅】の建っている地中(床下/基礎下の地中)に、地表面から伝わって蓄えられた地中熱を冷やさないように、9月10日から「冬モード」に床下システムは動きはじめます。
・建物の下(地中)が冷え始めてからでは遅いのです。冷え始める前から「冷やさない工夫」(それが床下システムの冬モード稼動です)がはじまります。

なお、「冬モード」は下記の期間/時間帯で、2階/天井付近の暖気を床下に送りこみます。

○期間:    9月10日〜3月19日まで
○稼動時間: 10:00〜21:00まで 


④上記の「床下システム」(冬モード)が稼動することによって、地熱住宅の基礎下部/地中の温度が保たれます。下記の測定結果をご覧ください。

(11月20日での測定結果)


(1月20日での測定結果)

*2001年1月7日 午前6時の測定結果
(画像をクリックすると拡大表示されます。)

・外気温マイナス2.9℃
・1階和室 16.0℃


これが、私達が開発した「伝導型地中熱利用」の原理です。