外断熱工法−私たちは1990年からこの工法の住まいを提供してきました−

2000年(平成12年)1月28日の朝日新聞「天声人語」にまで、住宅の断熱は〈外断熱〉が望ましい、ということが取り上げられました。

マンションで暮らす知人宅を訪れて、盛大な窓の結露に驚いた。本人は「気密性がいいから仕方ないらしい」と、すっかりあきらめている▼けれども実は、窓のように「見える」結露よりも壁の内側の「見えない」結露の方が、問題が大きいのだそうだ。カビが発生しやすいし、それを食べるダニの繁殖も勝手放題。建物そのものも弱っていく。たとえコンクリート製であっても、ひび割れから水が侵入すれば劣化する▼そうした結露を防ぐ方法として、「外断熱」という耳慣れないことばを聞いた。省エネルギーのために入れる断熱材を、建物の内側ではなく外側に置いて、全体をすっぽり包み込むようにする方法である。なるほど、こうすれば室内の暖かい空気が冷たい壁にぶつかることはなく、結露しない。断熱の効果もぐんと良くなる▼スウェーデンでは1973年のオイルショック直後、国を挙げて建物の省エネ対策を研究し、気象学や熱工学、微生物学、経済学などの専門家が4年がかりで具体策をまとめた。それ以来、外断熱が当たり前になったという(『日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク』、TBSブリタニカ)▼日本はといえば、ビルでも住宅でも外断熱工法はほとんど採用されていない。科学的な検討をする前に、柱と柱の間に断熱材を詰め込むやり方が広まってしまった。手間がかからず、費用も安くできるためらしい。例外の一人が東京都小平市で工務店を経営する松井修三さんだ。9年前に外断熱の木造住宅を造ってみて良さを実感、以後はこれしかやらない。「断熱は寒冷地に限らず大事なことなのに、無関心な人があまりに多いですね」▼スウェーデンでは省エネ対策を検討する際、あえて建築の専門家を入れなかった。慣習やしがらみを断ち切って、原理的にもっとも良い方法を探ろうとしたのだろう。
(朝日新聞2000年(平成12年)1月28日 金曜日「天声人語」より)

今や新築住宅を建てたいと思っている方で、その内容はともかく〈外断熱〉という言葉を聞いたことのない方はほとんどいないのではないでしょうか。また反対に、〈外断熱〉のメリットもデメリットも詳しいと自信をもっている人も少ないのではないでしょうか。

ここでは、梅雨がある多湿の日本だからこそ長持ちする木造住宅をとお考えの方とご一緒に、なぜ「家づくりの究極は外断熱」なのか、考えていきたいと思います。



1.外断熱とは

家を断熱するとき、今まではグラスウールなどの断熱材を外壁と内壁の壁空洞に、柱と柱の間に埋め込むように入れる内断熱でした。現在も新築の90%以上がこの「内断熱」を採用しています。これに対して、壁空洞を残したまま、柱の外側に板状の断熱材を途切れることなく張りつめるのが「外断熱」です。




 2.内断熱との比較

ここで、日本の伝統的な工法である在来軸組工法の内断熱と外断熱を比較して、概観してみましょう。

  内断熱(充填断熱) 外断熱(外張断熱)
断熱部(床・壁) 柱と柱の間 柱の外側
断熱部(屋根) 天井 屋根
断熱部(基礎) 基礎
断熱材 グラスウール他 ポリスチレンフォーム・ウレタン他
普及程度
(日本)
圧倒的多数 極少数
断熱の連続性 柱や土台などの
構造体で途切れる
基礎から屋根まで
途切れずすっぽり断熱
壁体内通気 なし あり
(当社では積極的に確保)
断熱性能 低い 高い
気密性能 低い 高い
蓄熱性能 低い 高い
床下湿度 高い 低い
梅雨時室内湿度 高い 低い
梅雨時木部湿度 高い 低い
冬季室内湿度 乾燥 正常
冬季木部湿度 乾燥 正常
換気効率 低い 高い
快適温度帯 夏季低め、冬季高め 夏季高め、冬季低め
地中温度利用 不可能 可能
温度差
省エネ性 低い 高い
耐久性 低い 高い
施工性
安易
熟練が必要


3.エコホームズと外断熱

 1990年(平成2年)より、エコホームズは「夏を旨とするだけでなく冬をも旨とする、長持ちするこれからの住宅は、外断熱にすれば達成できる」との確信に立ち、檜4寸角の在来軸組工法の外断熱住宅を提供してまいりました。全棟の気密測定・床下から屋根裏までの温湿度測定をしながら改良を重ね、1994年(平成6年)に特許出願し、現在のエコシステムが確立しました。

 外断熱による断熱性・気密性の高さに加え、基礎から屋根までの完全外断熱と、長持ちする住宅にするために開発した床下システムとの相乗効果により、夏の熱を冬まで、冬の冷熱を夏まで持ち越すことに成功しました。

 多湿の千葉県下において、湿気をコントロールする気密性能は、1995年(平成7年)にC値平均が0.9cm2となり、冬はほとんど暖房の必要がなく、夏はエアコンを除湿器として運転するだけ、という性能に到達しました。この実態が千葉大学工学部建築科宮田紀元教授に知られるところとなり、教室の大学院生と当社の住宅総合研究所研究員との共同研究チームが結成され研究を続けました。また、千葉工業大学小峰裕己教授および同研究室は外断熱住宅の耐久性に関する研究の実験測定を当社の住宅20棟について行い学会で発表。この研究発表によって温暖地での基礎外断熱の適正が認められ、後の建築基準法改正の流れをつくることになりました。

 1997年(平成9年)には新しい成田モデルハウスにおいて地下5メートルまで温度センサーを埋め込んで地中温度の変化を計測。地下5メートルの地中温度に支えられて夏の床下地中温度を冬まで持ち越していることを実証しました。この年には高温多湿地適応の地温活用の特許を取得しています。

 1998年(平成10年)、外断熱住宅の理論と実績が認められて、(財)性能保証登録機構より特別に基礎外断熱の高耐久性住宅と承認され、基礎外断熱住宅は当社だけの特権となりました。

 1999年(平成11年)には「次世代省エネルギー基準」が制定され、私達がいち早く次世代対応となりましたのは、今までの住宅に屋根断熱厚だけ少し加えればクリアできたからです。床下地中を蓄熱層として活用する住宅は、前述のように研究者や識者の広く知るところとなり、外断熱住宅のモデルとして「次世代省エネルギー基準と指針のテキスト」に取り上げられています。(別紙参照)

 尚、同年暮れには数ある特許出願に加えて「住宅の地中温度活用空調換気装置」を特許出願。これは外断熱住宅の特性を活かすことによって空調機が床下除湿と蓄熱の機能をも果たすものです。21世紀には、このようなものが普通になっていくことでしょう。

 2000年(平成12年)になると、「私達だけの基礎外断熱住宅だけを高耐久性住宅と認めるという例外」から発展して、他の会社でも同様の施工が認められるようになりました。(よかったですね) 名称の変わった新しい(財)住宅保証機構は「公庫は今年より基礎外断熱を許しましたが、基礎外断熱の性能保証をしたのは、御社だけであることに変わりはありません。」とのことでした。

 4.夏向き・冬向きの家を両立する外断熱

広い開口部で自然と一体となる 厳しい自然から身を守るシェルター
内と外の境があいまい 内と外を明確に区切る
寒さの中で暖を採る(採暖=暖房機で温かさを感じる) 寒さを入れず家中を一定温度以上に保つ(暖房=暖かい房)
人がいる時・場所・起きているときのみ暖を採る
  • 暖房温度が高い
  • 温度差大
  • 押入の墨や壁の中で結露
  • 乾燥
家全体の温度を下げない程度、わずかに一冬中連続的に暖房
  • 暖房温度が低い
  • 温度差小
  • 結露しない
  • 乾燥しない
梅雨には結露と共存しながら梅雨明けにあらゆる方向へ放湿
  • 木部の腐朽を防ぐための通気の工夫が発達
  • 木部の湿気を吸放出するのに適した接合技術の発達
夏乾燥風土のため結露の問題なし
冬の防湿は温度が下がる前に気密層で湿気を遮断する
  • 気密層の発達
  • 低温の空間をつくらない
換気は温度と湿度の内と外との区別をなくすためのもの
  • 多量であることが大切
  • 風通しが最も重要
換気は必要最小限熱ロスを少なくして、効率よく行うもの
  • どこから外気を取り入れどの経路を通ってどこから排出するかが問題
  • 外気を取り込むときフィルターや空気清浄器を通したり予熱・予冷ができる(熱交換器)
昔の土間床の保湿・保冷力
長い軒の出やヨシズなどによる日除け
茅葺き屋根の輻射熱遮蔽性


5.自然の恵みを受け止める外断熱

大地の恵みを受け止める外断熱

 大地は夏の熱を冬まで、冬の冷熱を夏まで持ち越すチカラがあります。地下5メートルあたりは年間で冬が最高温度(約18度)夏が最低温度(約15度)で、夏と冬が逆になっているのです。どうしてなのでしょうか?

 これは地上の熱が土の中を伝わって地下5メートルに届くのに約半年間の時間がかかるということです。夏の土表面は月平均温度で約30度ですが、その熱が地下2メートルに届くのは9月で、約23度程度に下がっています。10月には約21度になって地下3メートルまで夏の熱が伝わってきています。11月になると地下5メートルに「夏」が18度余りで届き、冬から春まで17〜18度レベルの温度が、地下5メートルには無尽蔵にあります。

 冬中無尽蔵にある地下5メートルの約18度の地中温度を、どのようにして活用できるのでしょうか。地上に建物がない、銚子気象台のデータで地中温度を見てきましたが、もし上に建物があれば、冬になっても床下の地中温度はあまり下がらないのではないでしょうか。床下が床下換気口からの外気にさらされる内断熱の住宅でも、気象台のデータより秋からの地中温度の低下は少ないでしょう。基礎を外側から断熱して外気をシャットアウトした外断熱の床下の地中温度は、夏の熱を相当長い間持ち越すはずです。床下温度を支える床下の浅い地中の温度を18度近い温度で冬まで持ち越せば、地下5メートルに届いている夏からの無尽蔵の約18度の地中温度に支えられ、冬中床下から地下5メートルまでの18度近い大蓄熱層が形成されるのではないでしょうか。

 6.自然の恵みを受け止める外断熱

大地の恵みを積極的に受け止めるには?

 基礎特殊断熱(特許)をして床下地中の温度が外からの冷え込みで下がるのを極力抑えました。また、床下の温度を下げないように、床下システム(特許)で日射熱を床下に蓄熱させました。

 こうして夏の床下のより浅い地中温度をできるだけ高いレベルで冬まで持ち越し、この浅い地中温度と地下5メートルに夏の熱が伝わって年間で最高になるのとをドッキングさせ、可能な限りその17〜18度を持続させようとしました。

 実際どのように夏の地中温度を冬まで持ち越しているかを検証するため、成田モデルハウスの建築前に、屋内と屋外の地下5メートルまで温度センサー(90カ所)埋め込み、計測を始めました。
 初年度のデータを次に示します。

 戸外の地下1メートルは、8月中旬から9月上旬にかけて25度近くありますが、12月初めに15度、1月には7〜8度まで下がっています。これに対して床下の地下1メートルの温度(基礎外断熱をし、床下システムで床下に日射熱を蓄熱)は、10月から11月に20度になり、12月に19度、1月上旬に18度あり、2月には年間で最高温度に達する地下5メートルの温度と同等になり、地下は5メートルまでの大蓄熱層(約17〜18度)になっていることが実証されました。

 2月18日の垂直温度実測データからは、床下地中温度だけでなく、住宅の1階、2階、小屋裏まで、18度弱の定常状態になっているのがわかります。

太陽の恵みを蓄える外断熱

 すべてが外断熱で"床下→壁の中→小屋裏→壁の中→床下"の通気を確保してある住宅は、窓からの日射熱が静かなこれらの気流に乗って床下にも届き、床下地中に確実に蓄えられます。また、冬の暖房熱も床下に蓄えられます。これらの日射熱や暖房熱が効率よく有効に蓄えることができるのは、夏から持ち越した地中温度に支えられているので、地中の熱が引き算されるのではなく足し算されるからです。

 地中温度に守られて、太陽熱や暖房熱がいつも豊かに貯金されているのです。突然の寒波の襲来で外気温が下がってかなりの引き算があっても、膨大な蓄熱(貯蓄)があるのでびくともしません。


 7.豊かな収納を確保できる外断熱

 外断熱の住宅は40坪の住宅を建てても約1.5倍の60坪の広さがあります。少なくとも60坪の値打ちがあります。これを正確に表現しますと、延床面積40坪の外断熱住宅の実質延床面積は、約1.5倍の60坪ということになります。これは下記のように計算します。

●内断熱住宅の利用可能なスペース=延床面積
●外断熱住宅の利用可能なスペース=
 断熱材の内側の気積÷2.6≒延床面積×約1.5

 外断熱の住宅は小屋裏・床下・壁の中・天井ふところなどの、断熱材の内側すべてが室内側になりますから、使用できるスペースが約1.5倍になるのです。

■小屋裏の利用 ●小屋裏を物入れやクローゼットなどに利用●吹き抜けとして利用
■床下の利用 ●床下点検口からの使用●和室の畳下収納庫●1階地袋の床板をはずして嵩のあるものを収納●床高を高くして大収納空間やホビールームなどに
■壁の中 ●室内側に開放して本棚などに●間仕切壁以外にもニッチが可能

 8.風土を楽しむことができる外断熱

■梅雨を楽しむには

  • 外断熱による高気密性は梅雨の湿気をシャットアウト
  • 外断熱による高気密性は空気の性質を利用した効率換気が可能になるので、家の中で発生した湿気を効果的に放出
  • 外断熱は断熱性能が高いので、入梅までの熱を蓄えているので、急に梅雨寒になっても安定した温度
  • 外気の気温が上がって外気がムシムシしてきても、室内は比較的低温だった時期の温度を蓄えているので、暑さをあまり感じない
  • 梅雨の終わり頃蒸し暑くなったときは、外断熱による高気密性のため、少しのドライ運転で効果的に除湿

 以上のように外断熱の家は梅雨であることを忘れてしまうほど家の中がさらりとしていて、カビやダニとは無縁。雨が静かに降って外周りの庭の手入れから開放され、日頃の喧噪を忘れるような時間、あじさいなどの花の美しさを観賞する心の余裕が生まれるのではないでしょうか。

■夏の高温多湿を楽しむには

 外断熱による高い気密性は、エアコンのドライ運転がおもしろいほど効果的です。室温が29度でも湿度が67%以下であれば不快指数80未満ですから、「外断熱の家は温度が高くてもさらりとしていて汗がでないよ」と楽しむことができます。また、基礎外断熱で冬の冷熱を床下地中に持ち越していますから、外が高温の日中は日除けさえしていれば外気より10度近くも低温で、自然の恵みに感動させられます。

■冬の低温乾燥を楽しむには

 日本の冬の乾燥はかなり低温で乾燥しているのが特長です。したがって気密性のよくない今までの家は暖めれば暖めただけ外気以上に乾燥することになり、加湿すると窓や暖房していない部屋や押入の隅、壁の中で結露するという問題を抱えてきました。

 外断熱の住宅は気密性が高いので冬の低温乾燥空気をシャットアウトして、新鮮な空気を必要最小限に効率よく取り入れます。外断熱によって夏から持ち越した地中温度と日射熱の蓄熱との相乗効果によって、安定した床下温度で守られているので、低めでも寒くはないので一層乾燥から免れます。難しい日本の風土の中にあって、自然で健康的な冬を楽しめます。

 9.おわりに

「家の造りようは、夏を旨とすべし」という徒然草の言葉が今に至るまで生き続けているのは、夏と冬の住まい方の両立という点において日本の風土がそれほど難しいものであるといえましょう。

 夏のための開放系の家と冬のための閉鎖系の家とを両立して、長持ちする家を造るという、先祖から託された大きな課題を解決するのは外断熱でした。

 伝統の知恵の結晶である木造在来工法の家を、北欧の知恵である外断熱の家の中に入れて、外断熱は日本独自の価値を生みました。

  • 夏の多湿と冬の乾燥は、外断熱による気密によって解決できる
  • 欠点とされてきた夏の暑さと冬の寒さがあるために夏の床下地中温度が冬に利用可能な温度で持ち越され、冬の床下地中温度が夏に利用可能な温度で持ち越される。

 今しばらくの間は、暖地住文化と寒地住文化の出会いによって、カルチャーショックのような反動と混乱があると思われますが、21世紀は「木造在来工法の外断熱住宅」が普通になっていくことでしょう。なぜなら、理想の住宅はエコロジー住宅の原点である伝統住宅の中に潜む、脈々と継承されてきた、その意味の延長線上にあるのでしょうから。



【外断熱工法及び地中熱利用に関する資料を無料で配布しています】
*下記もクリックしてご覧ください(↓)

エコホームズの家造りを知っていただくための資料があります!

すでに4683人が読んだ無料ガイドブック!


【参考情報】
【外断熱の地熱住宅】Q&A
外断熱の地熱住宅実例集
エコホームズの家造りに関するQ&A
新聞・雑誌に【地熱住宅】が紹介されました!


★外断熱工法について、「まだまだよくわからない・・・」という方は、下記のフォームからお問い合わせください。全て、私(玉川和浩)が回答いたします。★