【長生きできる家造り】のルーツ

究極のバリアフリー住宅 外断熱の平屋


私が、なぜ?これほど「究極のバリアフリー住宅」にこだわっているのか?
実は、6年ほど前までは、あまり「平屋」には興味がありませんでした。

なんといっても、新しく家を建てる方の主流は、「2階建て」です。都市部では、3階建ても増えてきました。社内でも、新しい家づくりのコンセプトを打ち合わせする場合、前提条件として、「2階建て」があたりまえになっています。
それまでは、「平屋」については、お施主様から特別に御希望があった場合のみ話し合っていました。

それが、なぜ? これほど「平屋」という家づくりにのめりこんでしまったのか?

恥ずかしい話ですが、自分の両親の家を建てる時から考え始めたのです。
お客様のためではなく、自分の父親・母親のためでした。両親の家を建てる時に、要望を聞いていく内に、高齢者の家づくりについて、自分の知識だけでは解決できないことがわかったからです。

私は婿さんです。
長男(男3人兄弟です)に生まれながら、婿さんになりました。
妻の家業が「住宅建築会社」であったため、約8年前に入社しました。人生イロイロです。

当然、両親は、長男として、私が両親の面倒をみてくれるものだと期待していたはずです。
しかし、黙って、婿さんになることをゆるしてくれました。

その両親が家を建てることを決意しました。
それまでは、賃貸マンションの1階に住んでいました。近所には友達もたくさんいます。
特に、新しく家を建て、別な土地に移り住むことに必要はなかったはずですが、私が住んでいる街に住みたかったようです。
また、私は、当初、住宅営業の部署でしたから、息子に実績をあげさせたいという気持ちもあったようです。

両親は自営業でした。私が小学校のころまでは、自宅で商売をしていましたから、子供のころには、私もお店を手伝っていました。
子供達3人には、なに不自由しない生活をさせてくれていました。

しかし、特に大きな儲けを得る業種ではなかったので、両親は、子供に服を買うために、自分達は我慢する生活が長かったと思います。
父は、1本のワインを3日間かけて、ちびちびと飲むのだけが楽しみであり、他には何の楽しみもなかったようです。
母は、特に旅行にも行かず、買い物もしない、趣味もない、ただ、子供達の世話とお店で働くことだけが日課でありました。

そういった生活の中で、コツコツと貯金してきたお金で家を建てることになりました。
予算は限られていますから、土地も定期借地にしました。

正直、私はうれしかった。
そして、私が両親のために建てる家の目的は一つでした。

両親に長生きしてもらう」家づくりです。


両親が以前住んでいたマンションの1階は、冬は寒く、夏はエアコンをかけないと生活できないほどの劣悪な環境でした。
若いころは良かったのでしょうが、特に、風呂場が寒く、風邪をひきたくない父は毎日風呂に入らず、2日に一度だけでした。

加齢と共に、夜中にトイレに行くようになった父は、トイレに入ると、その寒さで目がさめてしまい、後は、なかなか寝付くことができないのです。
冬は、一部屋だけ暖房をおこない、家の中でも古いダウンジャケットを着て生活していました。
笑ってしまうのですが、家では、父は靴下を2枚重ねてはいていました。床は冷え切っていました。
このような生活を送っていれば、父も母も、いつかは「ヒートショック」で倒れてしまうでしょう。

「両親に長生きしてもらおう」
「家中全体が暖房される家にしよう」
「親父が毎日風呂に入っても風邪をひかない家を建てよう」
「火の心配が無い家にしよう」
「建築費用が限られているので、小さな平屋にしよう。私達兄弟や孫達が泊まれる場所は確保しよう」
「父が先に寝たきりになるので、母が介護しやすい家にしよう」

このような家づくりを成功させたかったのです。

そこで、住宅が抱える問題点を探すことからスタートしました。
本・雑誌を読み、高齢者のお施主様からは「住まいに関する不満」をお聞きしました。また、福祉住環境コーディネーターの資格も取りました。

幸い、両親が「どうしてもすぐ建てたい」ということでもなかったので、充分な準備期間はとることができました。

建築期間中は、毎日のように、両親は現場を訪れていたようです。うれしくて、うれしくて、毎日見に来ていたのでしょう。

ようやく完成した平屋に入居したのが、2年半前です。以来、父は毎日風呂に入るようになりました(笑)。靴下ははかなくなりました。いつも裸足です。
母は料理のレパートリーが増えたようです。私の愛娘の面倒もみてくれています。外が大雪でも、雨戸を開けるまでは気が付かないようです。

今、父は張り切っています。「和浩の愛娘が結婚するまでは死なない」と笑っています。
母には趣味ができました。ボーリングです。かなりの腕前になったようです。
私も、ようやく長男の役目をはたすことができました。

正月に、3人兄弟が子供達と共に、両親の家に大集合します。
その時、次男の嫁さんが父に聞きました。
「おとうさん、何で?この家はこんなに暖かいの??」

そして、鼻高々と父が答えました。

「そりゃ、和浩が建てた家だもの。理屈はわからないけど、いい家に決まってるだろ!」