★第1章 外断熱だけに注目すると危険です!(パート1)

★第1章 外断熱だけに注目すると危険です!

「はじめに」のところでもお話しましたが、「一時のブームだけで【外断熱】が良い」と思ってしまうことは、すごく危険なことと言えます。
事実、こんな例があります。

ずいぶんと前になりますが、「外断熱工法」の特長が本や雑誌などで取り上げられるようになってから、ある大手ハウスメーカーが「外断熱の家」を大々的に発表しました。その会社はこのように主張していました。
*注:2006年3月、このハウスメーカー(Nホーム)は解散してしまいました。

「外断熱工法で家を建てると、床下・小屋裏も室内と同じ温熱環境になります。ですから、床下や小屋裏も室内と同じように利用できますよ。」

その通りです。建物(壁・屋根部分)を外断熱工法で施工し、さらに基礎も外断熱すれば、床下と小屋裏も平均温度では室内と同じ温度環境になります。
そこまでは良いのですが、その会社のホームページを見てビックリしました。基礎は外断熱ではありませんでした(基礎の立ち上り部分をしかも内側を一部断熱しているだけでした)。さらに、現在の「外断熱の家」では考えられないことですが、床下の防蟻処理(シロアリ対策ですね)が化学物質で施工されていました。
あのオレンジ色の化学物質です。

「床下は室内と同じですよ」と言っているのに、有害な化学物質を含む【防蟻処理剤】を床下(土台と柱の一部⇒つまり室内です)に塗っていたのです。

さらに驚いたことは、オプション工事(追加費用がかかります)の中に、自然素材(液状化した炭)による防蟻処理が提案されていました。
(これは、あるお客様から見せていただいたカタログに記載されてありました。)

これって、変なことだと思いませんか?

そもそも、外断熱工法は「基礎・壁・屋根、つまり住宅の外殻部分を外側から断熱すること」であるにもかかわらず、基礎は内側から断熱してありました。さらに納得できないことはシロアリ防除方法です。
その会社も「床下は室内だから、防蟻処理は自然素材でおこなうことが望ましい」ということを知っているのです。知っていながらも、建築費用が高くなるので、基本は「化学物質による防蟻処理」としているのです。
つまり、あの「坪単価」を高く見せないために、「自然素材による防蟻処理」を「追加工事=オプション工事」として設定しているのです。

「外断熱ブーム」になる前から、外断熱工法を導入している会社は、当たり前のこととして、床下のシロアリ対策を確立して、はじめて外断熱工法を導入しているのです。この場合、「床下のシロアリ対策」とは断熱材の仕様(シロアリ被害にあいにくい断熱材などを選定すること)などの素材的な防蟻処理のことです。
木材にシロアリ防除剤を塗布するなどの方法は、念のために「自然素材(ヒバ油や液状の炭)による防蟻処理」を行っているにすぎません。工夫に工夫を重ねて防蟻剤に頼らなくて済むものを開発しているのです。

この事例からわかることは、「外断熱ブームに乗る」ことだけを目的として家造りをおこなっている会社(ハウスメーカー・工務店)は、外断熱工法だけを「目玉」にし、その他の重要な部分は、坪単価を下げるために、省こうとします。

これが危険なことなのです。

家造り全体において、単に「外断熱工法」だけを「目玉」にして、「この住宅不況の中でも、外断熱工法でやっていることを宣伝しておけば、どんどんお客様が集まるだろう」的な発想で始めた会社がたくさんあります。 
そのため、断熱工法以外の部分(例えばシロアリ対策のこと)は、従来の建て方で「充分だ」と思っている会社があります。

非常に危険なことです。
原理原則にしたがって建てる「外断熱の家」は、床下は室内環境と同じになりますし、必然的に床下空気が室内に侵入してきますから、そこに化学物質を使用すれば、有害物質が室内に充満します。
せっかく、健康的な住まいを建てるために「外断熱工法」を取り入れた方が、この化学物質によって「シックハウス」を発症させることになれば、本末転倒です。

なお、このことを私に教えてくれたお客様は「防蟻処理剤(化学物質)が有害であること」をご存知だったので、そのことを営業マンに聞いたそうです。すると、そこの営業マンが答えたのは;

「工事の最初に防蟻処理をおこないますから、ご入居のころには、防蟻処理剤から揮発する成分は全て出ています。だから心配しないでください」

と答えました。

ところが、「その防蟻処理の効果は永久に続きますか?」
と聞いたところ、営業マンが答えた内容に心底驚いたとのことです。

「防蟻処理の保証期間は5年間です。5年後に、また防蟻処理をおこなってください」
と簡単に答えたそうです。

つまり、5年後は、ご家族が住んでいる中で、この化学物質による「シロアリ防除工事」を行う必要があると言うのです。

「さっき言っていたことと違うのでは・・・・」
とお客様が思ったのは言うまでもありません。

私が「外断熱 虎の巻」を書こうとおもった理由がここにあります。
「外断熱ブーム」に乗って、いろいろな会社が無茶苦茶なことをはじめると、5年先にはどうなるか?

これらの「なんちゃって外断熱」の家が欠陥住宅として社会問題になります。
ブームであったものが、一度でも問題を起こせば、「外断熱は欠陥住宅だ!」というブームがおこります。

これは怖いことです。
外断熱工法が悪いのではなく、建築する会社に問題があるのですが、そこから外れて、工法だけが攻撃されるようになります。
これでは、全国で真面目に取り組んでいる会社に大きな迷惑がかかります。

そのため、あえて「業界の恥」を書くことになりました。
住宅業界は、本当に恥ずかしい・情けない業界です。
日本で最も遅れた(進歩の無い)業界です。

このように、「外断熱ブーム」だけを目的にして考えると、まだまだたくさんの問題が出てきます。

これをお読みのあなたが「本物の家造り」を探すため、まだまだ知らなければいけないことがあります。

 (次号に続く)